THE KING OF FIGHTERS XIV
THE KING OF FIGHTERS XIIIから六年……
今再び、伝説の男達が帰って来た!
もはや身も心もパチスロ産業へとシフトし、
ゲーム? メーカー? となっていたSNK PLAYMOREだが、
唐突に中国企業に買収されたかと思えば「ゲームでイチバンを取る!」とパチスロから撤退し、
社名もプレイモアをポイして『SNK』に戻ったりとか色々した。
その最中に発売されたのがこのTHE KING OF FIGHTERS XIV。
完全3D新作正統ナンバリングKOFである。
沸騰する魔女の釜でじっくりコトコトぐつぐつ煮込んだ
身の毛もよだつ胡散臭い失敗作が出来上がる未来しか想像出来なかったが、
今作は今まで不可能と思われていた“2DKOFのゲーム性を3Dで再現”という謎技術を
いとも容易く我々の前に見せてくれた。
そんなん出来るならKOF12のときにやっとれや、と誰もが思ったことだろう。
その種明かしは、すでに格ゲーの開発力など失っていたため
まずは開発メンバーを集めるところからのスタートとなったSNKが、
旧SNK餓狼チームにして名作、STREET FIGHTER IVスタッフの引き抜きに成功したことにある。
なるほど! ストIVをずっと作っていたメンバーなら納得だ。
さらにCAPCOMからも格ゲー全盛期を支えた人材を獲得。
SNK PLAYMORE時代からの戦力と合わせて、ここにオールスター開発陣が完成した。
そんなこんなでネオSNKの運命や如何に!?
つづく
バランス S 空気 ?(流動的)
昨今の格ゲーはKOFXIVに限らずゲームバランスが良くなるまで何度でも、
予算の許す限り何度でもパッチで調整されるものなので、
もはや評価する意味、必要もないだろう。S! もうずっとS!
空気も基本、熱くなる調整がなされるだろうが、
うっかり寒いスタイルのキャラが最強化し、
皆こぞって使うことになったりでもしたら寒くもなるだろう。
そんな日もあるだろう。そしてまた調整されるのだろう。
この欄に何を書けば良いのだろう。
KOFXIV STORY
完全新作ナンバリングタイトルである今作はストーリーも新章となっている。
ただ、今回は序章も序章ということでストーリーが大きく動くことはなく、
今後の布石となる展開を散りばめて、そこで終わる。
ノリはKOFにしては珍しくコメディタッチ。
如何にも裏がありそうな人物がただの良い人だったり、
如何にも裏がありそうな人物がただの変人かと思ったらやっぱり裏があったり、
終始、笑わせに来ている。面白い。とにかく明るいKOFだ。
シリアス部分のあらすじは、アッシュ編で斎祀が時空を歪めた影響で、
過去、現在、未来、あらゆる場所から集まって来た憎悪や負の塊、バースが生まれ、
それを撃退するもバースの中身は飛び散り、
ストーリー上、死亡、あるいは封印、消滅したはずの悪人達が復活!?
という次回作以降ではもう完全にオールスタードリームマッチにするぞ、と言わんばかりのものだ。
そもそも今作ではついにサムライスピリッツからも
あのナコルルがウェイカム(バース)を追って正式に参戦している。
解釈の分かれる部分ではあるが、KOF世界の過去にはサムスピ世界(≠正史)があり、
サムスピ時代から聖霊となってずっと生きて(?)いたナコルルが自然の危機に受肉した、
と考えることが出来る。かも知れない。そんな気がする。
中間デモでも専用のCGムービーが用意され、あたかもKOFXIVのヒロインであるかのようだ。
←ノリノリでJKコスを着る恐らくロリBBAのナコルル。
「時代・・は違いますけれど、私の故郷にご招待します」
と語ることからやはり異世界・・・からの参戦ではなさそう。
新章のキーパーソンにしてタン先生の最後の弟子にしてバースを対の存在とし、
共鳴する謎の力を持つシュンエイを主人公とするならば、
あたかもナコルルは新章のヒロインであるかのような扱いだ。
バースの中身には勝利メッセージから確認されるだけでも
ルガール、オロチ、ガイデル(レオナの父)、
クリザリッド、イグニス、アッシュ、羅将神ミヅキが存在しており、
エンディングでは京達がオロチを再封印、エリザベートがククリを介し、アッシュを発見している。
もはやKOF世界のあらゆる垣根は取り払われたと思って良いだろう。
ラスボスのバースが舞台装置でしかないためストーリー的には現段階ではまだ弱いが、
そこを補うためのコメディ要素だったのかもね?
今回はPS4専用ソフト(後にアーケード化)ということで、
CPU戦は“アーケードモード”ではなく、“ストーリーモード”として搭載されている。
しかし、実態はいつものアーケードモードと何ら変わりなく、
中間デモがCGムービーになった程度である。
CGムービーはフルボイスなのもあってまだ新鮮だが、エンディングは伝統の紙芝居。
新キャストが設定されていないキャラが多数登場する関係かボイスもない。
デモムービーはほとんどが中ボスアントノフ(胸毛の濃いオッサン)のコメディパートであり、
とても面白いのだが毎回観ているとムサ苦しい。ムサ苦しくないキャラも見たい。
そして何より、“家庭用ゲーム”の“ストーリーモード”であるにも関わらず、
各チームにOPデモ、プロローグ的な物が一切ない。
戦う動機が判らないのでエンディングを見ても、え? そういう話だったの? となることも……
その辺を補完するためには、やはり従来のアーケードKOFの慣例である
公式チームストーリーを事前に読んでおく必要がある。
いつも通りと言えばいつも通りではあるのだが、時代にそぐわず、不親切な印象は否めない。
かつてストーリーで多くのファンを生んだシリーズとして、
何人にも負けない“ストーリーモード”を期待しても決して贅沢ではないはずだ。
サリナが超必で「ユメ ノ ジツゲン ノ タメ――!」と叫ぶ度に
「夢って何の話だっけ?」と思ってしまった。
尚、公式ストーリーのテキストは文章が何となく怪しいが、
ゲーム中の各種テキストや、特定の組み合わせでの掛け合いデモでは
非常にセンスの良い日本語で楽しませてくれるので心配はご無用。
フルボイス勝利メッセージ等、収録ボイスが多いので楽しい。
悪夢でもない? 声変わり
今作ではお馴染みのキャラクター達の声が一部除いてバッサリと変更されている。
京や庵もだ。
おかしい……こんな事は許されない……
サムライスピリッツ 天下一剣客伝の悪夢が再び繰り返されてしまった。
大幅な声優変更ということで、SNKもついにアニメの人気声優をあてがって声豚を釣る時代か。
キャラソン出してお渡し会か。
KOF2002UMの小野大輔プッシュはノーリアクションだったけど……そういう時代か。
SNKもそういう時代か。
と、思われたが、NEOGEO時代から続く伝統の大阪役者推しキャスティングは健在だった。
誰も知らない声優ならまだ良い方で、声優というよりナレーター?
アナウンサー? デバッカー? 漫画家?
そもそもプロ声優なのかもよく判らない謎のラインナップである。
時代に逆行している。素晴らしい。
アニメを観ればいつでも聴ける声ではない、SNK独自のオンリーワン思想。
だからこそ価値がある。何も変わっちゃいない。
もちろん中には人気声優もいるので声豚も少しは安心だ。
しかし、SNK魂は健在とはいえ声が変わってしまったのは事実。
繰り返された悲劇に人々は再び涙に暮れた……かに思われた。
だが実際に新キャスト陣の声を聴いてみると、不思議だ。似ている。
独自解釈の演技でキャラの性格さえ変わってしまっていた剣サムとは違う。前任者と似ている。
いやこれはもはや、真似をしている。完コピだ! KOFモノマネ大会だ!
実際、八神庵、クラーク、アンヘル等の声を聴いて、
バトル時のボイスだけで「変わった!」と即答出来る人間はいないのではないか。
もし分かった声豚がいるならその絶対音感を別の場所で活かすべきだ。社会貢献すべきだ。
声質は当然、発声やイントネーションまで似ている。
明らかに前任者の声を聴かせ、モノマネをさせている。
中にはSNK世代声優であり、リスペクトのあまり自ら演技を寄せた方もいるかも知れない。
それにしてもそっくりさん、いやさクローン人間大集合である。
これなら安心だ。残念ではあるが、悪夢ではない。
何せ20年以上も続くシリーズである。若返りを図るには良い機会だったのかも知れない。
事実、続投している往年メンバーの一部に声の衰えは隠せない。
哀しいが、我らにも受け入れねばならぬときが来たのだろう。
ただ、唯一、ユリ・サカザキだけはキャラクターの解釈が変わっていると感じる。
声質は似ているが、龍虎ファンを脱力させたあのアホみたいな間延びした演技ではなく、
力強い空手少女(?)風になった。
担当は数少ない人気声優枠の加隈亜衣さんなので、そこは丸投げしたのかも知れない。
しかし「はおーしょーこーけーん!」は健在だし、かくまし可愛いから許すブヒィィィ!
新キャラクター達
KOFXIVには完全オリジナルキャラクターが多い。
数えて実に14人だ。グリフォ……ダイナソーを含めれば15人だ。
需要としては新キャラよりも人気の旧キャラを、ということになるのだろうが、
今作はシステムに革新的な新要素がない変わりに新キャラクターを増やし、
その辺で新鮮味を出す方針だったらしい。
となれば旧SNKクオリティの新キャラを期待してしまうところだが――
傾向として、濃いキャラは胸焼けするほどに濃く、薄いキャラは透けて背中が視えそうなほど薄い。
設定イラスト段階ではそんな印象はないのだが、3D化の過程で特に薄くなっているように感じる。
PICKUP NEO SNK
シュンエイ
決め台詞
トロすぎだろ!
そんな薄いキャラの筆頭格がこの新主人公? 主人公かな? 主人公だよね? のシュンエイだろう。
歴代主人公のような炎使いではなく、デカい手を出して闘うスタイルだが、
一応、相手が燃える感じになるので主人公の資格はあるはずだ。
よしんば主人公でないにしても新章のキーパーソンにして売りのキャラクターのはずだ。
だが、淡い色使いも相まってか、デザインも存在感もSNKキャラとしてはどことなく薄く感じる。
性格にインパクトもなく、まったく普通のイケメンキャラだ。
戦闘スタイルもKOFらしからぬ空中ダッシュを持ち、マントをたなびかせながら
KOF史上最も華麗に空を舞うのかと思いきや空中ダッシュはアクセント程度で
実戦では生発動からEX技をぶっ放した方がだいたい強い。薄い。
KOF史上最も華麗に空を舞ったのは別の新キャラのミアンだった。